キノの旅二十巻第七話 ターニングポイント 感想 |
●ターニングポイント -Turning Point-
一言でいうなら:キノに倒されて一念発起(いちねんほっき)する話
名言:「殺すまでもないよ、エルメス。この人は、ボクを殺すには下手すぎるし遅すぎる。一体なんなんだろうか……? 何がしたかったんだろうか……?」
登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約10ページ
備考:第三者が主人公の話・戦闘あり・管理人が好きな話
あらすじ
この国にはバカしかいない。なぜみな気付かないのか。こんな国は壊すのが俺の義務だ。この国の大統領は馬鹿だ。彼のスピーチや本を何度も見たがクズだった。なので殺すことにした。殺しても刑は軽く済むだろう。執行猶予がつくかもしれない。まあ無罪は建前上無理かもしれないが、愚かな大統領を殺して国を救った男として生きようじゃないか。大統領が自分の町に来るということで、学校は仮病を使い休んだ。だが演説を聞きに来た観衆のせいで近寄れず、その日は帰った。
大統領なんて殺す価値もないだろう。それよりもこの国で人気の歌手を殺すべきだ。自分と同じくらいの年で国民的美少女歌手を殺すべきだ。こいつの番組やレコード、雑誌を出来る限り買ったがこいつはブスだ。いつもくるラジオ局でサインをねだるフリをして殺そう。俺はバスを乗り継いでそこへ行った。だがファンの群衆の中でカッターナイフを落としてしまった。またその歌手は今日からサインに応えることが出来なくなったと発表し、すぐ車に乗り込んでしまった。バカ女を殺し損ね、バスもないのでこの日家に帰れなくなってしまった。なりゆきで一晩警察お世話になり、親からは歌手のファンとは知らずサインがもらえなくて残念だったなと、同情されてしまった。
ブスで下手でバカな歌手など、人気は一時的なものだ。俺が殺すまでもないのだ。もっと愚かで許しがたいのは旅人だ。アイツらはうるさい。やつらのバカさに気付いた以上は放っておくわけにはいかない。俺は旅人が現れるのを、気が遠くなるほどの三日間待った。そして絶好のチャンスが訪れた。自分と同じぐらいの歳の旅人がいた。二輪車のモトラドを両手で押しているという事は、四輪車も買えない貧乏人なのだろう。俺は襲い掛かった。
オチ
空を見ていた。倒されていた。旅人の上半身が見える。俺は死ぬのか。世界にとってなんと損失か。この世界は俺が消えたことひどく後悔するだろう。すると声がして、殺す価値も事情を聞く時間をかける意味もないと言われた。
病院で目をさました。旅人の台詞、自分を殺す価値もないだと。ふざけるな! 絶対に殺してやる。そのためにならなんでもやってやる。勉強や体を鍛えたり、旅人をよく知るためにホテルで働いてやる。俺は考え方を変えなかった。ただ、焦るのを辞めた。
人生の転機はいつかと聞かれた。転機に注目するインタビューを受けていた。先生は十八歳にデビューした大ベストセラー作家で、大統領に表彰されたり、人気歌手と結婚したりといろいろな出来事に遭遇したが、そのなかでも転機があったはずだと言われた。
先生と呼ばれた男は、切っ掛けは一つに限らず、さまざまな考えや行動が今の自分につながっていると言った。そして、"転機はなんだったのか?"と訊ねられた瞬間が一つの転機であり、"そんなものはなかったし、これからもないだろう"と思えた瞬間が転機であると言った。
感想
うん、やっぱり管理人はハッピーエンドが大好きである。この話の主人公はおもしろい。頭の中ではとんだ凶悪犯だが、暗殺対象の関連品を律儀に集めていたり、暗殺計画がまるでうまくいかない所がほほえましい。いや、馬鹿にする気はむしろなくて、失敗してた際のなりゆきが"けなげ"で、最早かわいい。
そんな中、強気な主人公はキノに倒される。タイトルイラストにもなっている蔑んだ目をしたキノが名言を発する。特に「一体なんなんだろうか……?」の表現は、キノが本気で主人公が弱すぎて理解不能だという感情を読み取ることができる。読者これまで口だけの主人公にさんざん付き合わせられてきた。そんな折、キノに価値がないと壮絶につっこまれてしまうのだから爽快である。
そしてそれがターニングポイントとなり、主人公が大成功を収めてしまうのだからとても嬉しい。やっぱり管理人は物語がハッピーエンドの方が気持ちいい。主人公は殺人の絶好のチャンスを得ても実行しないということは、改心したに他ならない。キノは意図せず主人公を良い方向へ変えてくれたのである。
キノの容姿と装備:黒いジャケット
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:46)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:1(累計数:54)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:なし