キノの旅五巻第四話 英雄達の国 -No Hero- 感想 |
●英雄達の国 -No Hero-
一言でいうなら:7人に襲われる話
名言:
「一応言っとく。―さよならキノ」
「"―英雄達は還らず、ただ我々の胸に生き続ける―"」
登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約40ページ
備考:戦闘あり・他の話とリンク(英雄達の国 -Seven Heroes-)・同名の話あり・ひと気のない国
あらすじ
唐突に戦端が開かれた。キノはつい最近入手し、名前もフルートと命名したばかりのライフル銃を手にした。エルメスには一応別れを告げた。相手はライフル等で武装した7人もの男達だった。まず一人を狙撃、行動不能にさせ、それを助けようとした男を撃ち殺した(※1)。男達は狙撃を防ぐため発煙筒を投げた。キノは煙で視界が悪くなるなか、あえて行動不能にしていた男に致命傷となる弾丸を撃ち込み、残り5人となった。
男達は一人が囮になり顔を出すはずのキノを狙い撃とうとしたが、キノは事前にそれを察知し狙い撃とうとした男を撃ち殺した。残り4人。男達はライフル銃にグレネードを取り付け発射(※2)、爆発によりキノを攻撃した。さらに二発目を放ちキノに追い打ちをかける。キノはスコープを使わず金属照準器を使い、自分めがけて高く放射物を描く塊を撃ち落とした(※3)。驚愕する男達。
一人の男が話があると声を上げた。両手を挙げキノに見えるよう体を晒す。止まれとキノが言うが、男は歩き続ける。そして男の視界にキノが入ったと同時に突撃、そして爆弾が入った袋をキノに投げつけた。キノは一発目と二発目で男の体を撃ち、三発目で袋を撃った。袋は前へ進む力を失い男の前に落ちた。男はそれを拾いキノへ突撃。キノは四発目を撃たず身を翻し全力でその場から逃げた。
残り3人の男達は血痕を確認、目標は負傷したようだった。それを頼りに追跡、撃ってきた建物にグレネード撃ち込み、再び血痕を頼りに建物の一室入った。フルートが落ちていたが、引き金にワイヤーがついていること男達はに気付かなかった(※4)。さらに血痕を辿ると仲間の首があった。血痕はキノのものでなくその首のものだったのだ。それを理解し男が泣きながら首を持ち上げた。すると仕掛けられていた爆弾が爆発。それにより一人は即死、生きていた一人はキノが殺し、瀕死状態である最後の一人とキノは対峙した。
オチ
キノが襲った理由を聞くと、彼は自分達の国を守れず英雄になれなかったと言い死んだ。キノは彼らが第五話で帰還しなかった英雄達であることに気付いた。そしてエルメスの元に帰った。
感想
キノの旅シリーズで最大の激戦と言えるのがこの話である。相手は男七人と圧倒的に不利のはずだが、そんな逆境のめげず最終的にキノが圧倒する圧巻な内容である。本作を読んで思い出したのはアニメ攻殻機動隊2ndGIG「左眼に気をつけろ」である(2004年放映、キノの旅本巻2002年発売、参考URL:http://www.ntv.co.jp/kokaku-s/story/onair13.html)。
「左眼に気をつけろ」と本作を比較してみると、一人対多数という構図、敵を負傷させてからのおびき出し、部隊保護のための煙幕、狙撃兵が仕掛ける囮銃等々、随所で共通点を見い出すことができる。ネタバレするがこちらでは多数側が辛勝するので、男達がキノに勝つにはどうすれば良かったが分かるかもしれない。…そういえば勝つのが女性という点も共通している…女性って強い…洋画ワンダーウーマン早く観たいな(←話が飛び過ぎです)。
キノの容姿と装備:黒いジャケット・ゴーグル・カノン・スコープ+サプレッサー付フルート
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:8)
殺害人数:7(キノの累計殺害人数:13)
キノが危害を加えられそうになった回数:1、一連を含め(累計数:18)
国の技術レベルと特産物等:国外
収穫:男達が持っていたライフルの弾・みやげ話
解説
購入当初は管理人の銃に関する知識が浅く読み流してしまった節があるが、少し知識が付いた今読み返すとキノの凄さを理解できる。なのであらすじで※を打った箇所の解説を試みたい。といっても管理人はシューティングゲーム好き程度の知識なので、正確性に欠けていたり、そんなこと知ってると思われるかもしれないがご容赦願いたい。
※1…キノの旅八巻「歴史のある国」でもエルメスが「〜、呻いている負傷者を助けに飛び出してきた人を遠慮なく撃ち殺したんだね? 狙撃兵がよくやる手」と指摘するように、これは狙撃兵の有効な戦術の一つのようだ。一人殺すならすぐできるがそれではほかの敵が身を隠してしまう。そこでわざと生かしておき、別の敵を誘い出すことで一気に複数人を仕留められる。
※2…作中ではグレネードと呼ばれているが、正式な名称は「擲弾(てきだん)」と言うようだ。(参考URL:「キノの旅辞典」http://budusheye.okitsune.com/woerterbuch.html)
管理人はシューティングゲームが好きでいくつかプレイしているが、このようにライフルにグレネードを取り付けて発射するゲームを見たことがない。いや、既に手元になくて確認できないのだがメタルギアソリッドPWにそんな銃があった気がする。アニメなら唯一GATEの自衛隊の戦闘シーンで見た覚えがある。まあとにかく銃が出る作品が好きでもなかなかお目にかかれないので、参考画像を掲載する。参考URL:ウィキペディア「グレネードランチャー(ページ内画像)」http://bit.ly/2JOTkzU
※3…まず飛んでいる弾頭を撃ち落とすだけでも十分すごい。どんなものを撃ち落としたかイメージを掴むために2つの動画をご紹介。
こちらは自分の好きな映画「キャプテンアメリカ・ウィンターソルジャー」よりグレネードランチャーの発射シーン。これはあくまでフィクションかつグレネードランチャーからの射出なので本作とは性質が異なるのだが、普通の銃から発射される弾とは違い、グレネードのような大きな弾を発射する際は目視も可能であることを掴んでいただければ。
https://youtu.be/7o8VGH5xV4Y?t=1m12s
2つめの動画は自衛隊の実演風景。作中のイメージとしてはこちらが近い。放たれた弾は十秒程度時間を置き、目標付近で爆発する。この映像では弾を視認できない。
https://youtu.be/CFVZXeqmnao?t=1m7s
こんな弾をキノはフルートで撃ちぬいたのである。だが、すごいのはそれだけではない。(画像:キノの旅十八巻口絵「草原の国」より)
作中、キノがそれを撃ちぬいた文章、83P中盤にはこうある。”二回目の破裂音と同時に、キノは『フルート』を構えた。曇天に黒い塊が上がる。キノはスコープを覗かなかった。その下の金属照準器を使って、自分めがけて高く放物線を描く塊を狙った。撃った。通りの空中で、爆発が起こった”
今になってこの文章を読み、とても驚いた。購入当時はよく意味が分からなかったのだが、これは相当凄い。というかシューティングゲームをする人ほどこんな発想ができない。FPSやTPSといったシューティングゲームでは大抵の場合、視野の広い構え状態とスコープから見た状態、2つ視点を切り替え戦う。ゲーム画面を紹介するとこうなる。(画像:メタルギアソリッド5TPPよりキャプチャ、銃は分かりやすいものを適当にチョイス)
●視野の広い構え状態
●スコープから見た状態
この2画面をボタン操作で即座に切り替え戦う。だがキノはスコープを使わず金属照準器、2枚目の画像でいうスコープの下側にあるはずの照準器を使ったのである。つまり、その時にキノが見ていた光景は…
このような光景だと想像できる。見ての通り視野がかなり悪いのである。こんな視野では「あれ? グレネードがスコープの影に隠れて見えなくなった!?」と思った時点でドカンである。
シューティングゲームが好きな方なら1枚目と2枚目の画像を即座に行き来させるのが当たり前であり、まさか2枚目のようにスコープを使わず3枚目のように狙って撃とうとは思わない。キノがあえてそちらを選んだのは、間近に迫る弾を撃ち抜くには下の照準器を使ったほうが有利と即座に判断したためであるが、こんなに視野が悪いならカノンで撃った方が視界が広く良かったのではとも思う。でも、ハンドガンに比べライフルの方が弾速が速い上命中精度も高いと聞く。持ち替えの都合もありフルートの方がいいのか…とにかく、キノはすごいのである。
※4…フルートの引き金にワイヤーが付けられていたことに男は気付かなかったとある。これはキノがワイヤーを引くことで遠くからでも発砲できるようにしたことを意味する。一連の流れとしては、キノは敵がグレネードでの攻撃で仕掛けてくると予測。あらかじめ窓辺にフルートを固定し引き金にワイヤーをつけその場を離れる。敵が来る頃合いを見計らいワイヤーを引き発砲。敵は音につられそちらを向き、窓から出ているフルートを発見、グレネードで爆撃。仕留めたと思って確認に来る敵をさらに罠にはめるのである。男達がフルートにワイヤーがついていることに気付き、それによりキノが生きていると確信できれば、男達が次の罠にはまることはなかったかもしれない。
このように不肖ながら解説をしてみました。ミリタリー系の解説は初挑戦ですので至らぬ点があったかと思いますが、ご容赦いただければと思います。