キノの旅を総括したい

"世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい"
そんな世界を余すことなく総括する、キノの旅まとめサイト。ネタバレ注意


 
 〜 管理人コメント 〜

小説版キノの旅23巻が
2020年11月10日発売!
恒例のレビューは年末年始
頃からになると思います


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キノの旅XIII 感想(ネタバレあり)

●キノの旅XIII -the Beautiful World-
「人は、他人の残酷さにはよく気づく」 -It's Hard to Say, But We Are Wrong.-
発売日:2009年10月10日
登場人物:キノとエルメス、シズと陸とティー、師匠と弟子

 

 

2018/6/24以後周辺〜巻全体を通し記事を加筆修正

 

この巻について
 口絵が終わると「百年後に本作品を読まれる方へ」と題し、諸注意やあとがきが当時でも問題となっていたとの記述が。お話の方は、要人護衛の仕事を引き受けた師匠達が怒れる群衆の包囲を突破する「昔の話」、不愉快ながら見事に利益が循環しているように見える「必要な国」、各主人公達がフリーダムにコラボする「いろいろな話」などなど。

 そして、あとがきでは著者の感性を知ることができる貴重なインタビューを収録。

 

 

目次

口絵「嫌いな国」(シズのお話)
口絵「凄い国」
口絵「生きている人達の話」(師匠のお話)

百年後に本作品を読まれる方へ

プロローグ「この世界の話・b」
第一話「昔の話」(複数主人公)
第二話「家族の国」
第三話「違法な国」
第四話「旅人の国」(シズのお話)
第五話「必要な国」
エピローグ「この世界の話・a」
スペシャル収録「いろいろな話」(複数主人公)
あとがき

[ 小説第13巻 ] 21:33 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.29 Tuesday
キノの旅十三巻口絵 嫌いな国 感想

●嫌いな国 -Abandon Ship-
一言でいうなら:理由をつけて実践しない話
名言:(強いてあげるものはなし)


登場人物:シズと陸とティー
話の長さ:数ページ

 


あらすじ
 移住を求め安定しているような国に来たが、シズだけが却下されてしまった。やむなく国の商店を回っていると、男が話しかけてきた。オープンカフェで話を聞いてみると、この国は酷い国でさまざまな問題があると愚痴を言った。シズは国を出てはどうかと言うが、自分の登録を外す代わりに新しく誰か登録しなければならないから無理だという。

 

オチ
 そこでシズが移民を求め先ほど却下された話をしたうえ、これまでの旅の道具もさしだすと言ってみると、男は多めのお金を置いて逃げた。

 


感想
 口絵が素晴らしいので掲載させてもらいます。(出典元URL:https://www.pinterest.jp/pin/336784878354800915/

 たいていの人は現状について不満を持つものである。だが、本当に嫌ならやめてしまえばいい。しかし、それもできないから人間は悩むのである。

 

 

殺害人数:0(シズの累計殺害人数:27)
シズの主張が認められなかった回数:0(累計数:5)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:アイスクリーム

 

[ 小説第13巻 ] 21:36 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.29 Tuesday
キノの旅十三巻口絵 凄い国 感想

●凄い国 -Nothing Special-
一言でいうなら:凄くても誰でもできると廃れる話
名言:(強いてあげるものはなし)


登場人物:キノとエルメス
話の長さ:数ページ
備考:口語がメインの話

 

 

あらすじ
 これから向かう先はコーヒーアートが凄い国らしい。昔師匠に聞いたとキノはエルメスに話した。そしていざ入国、カフェでコーヒーを注文するが出てきたのは普通のコーヒーだった。店員さんに聞いてみるともう誰もやっていないと言い、昔のコーヒーアートの写真を見せてくれた。やらなくなった理由はと聞くと店員は答えた。

 

オチ
 全員できるなら誰も褒めてくれない。そしていちいちやるのが面倒になった。


感想
 タイトルが好きなお話。さまざまな国を巡るキノの旅においてわざわざ「凄い国」と題されるのだから、さぞかしインパクトがあるものかと思いきや…コーヒーアート、凄いのは確かだがなんとも地味である。現実世界において私たちは何気なく生活している。例えば車の運転。普通は運転ができても多くの人ができるので驚かれない。だが、知らない人からすれば凄い事なのである。

 

追記

 城壁の色が黄色と茶色、そして読み慣れない「臙脂色」とあるがこれは「えんじ色」と読むらしい。

 


キノの容姿と装備:不明
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:30)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:35)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:34)
国の技術レベルと特産物等:現代・コーヒーアート
収穫:なし

 

[ 小説第13巻 ] 23:12 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.29 Tuesday
キノの旅十三巻口絵 生きている人達の話 感想

●生きている人達の話 -You Should Be So Lucky.-
一言でいうなら:自分たちの最後を気にする話
名言:「〜、そんなことを毎日悩みながら生きるのは、人生の無駄遣いです」

登場人物:師匠と弟子
話の長さ:数ページ

 

 

あらすじ
 唐突に弟子がいつ死ぬのだろうと師匠に言った。死にたがっているわけではない。これまでさんざん殺して危ない橋を渡ってきて、一度も被弾したことがない。でもいつかは殺される側に立つ。そして最初の質問に戻ると弟子。
 「さあ」と答える師匠。すると弟子は師匠でも分からないことはあるのか、ではこいつらは分かっていたのかと自分達が倒した死体を見渡す。師匠は明日どこかで死ぬかもしれないが、それを毎日悩みながら生きるのは人生の無駄遣いだと言う。それに頷き、自分達が爺さん婆さんになるのが想像できないと弟子は言い、さらにどうやって死ぬか分かっている朝が来ますようにと星に願いをかけた。


感想
 最後の弟子の願いは「優しい国」にて叶うことになる。師匠も老婆になっても健在であり、2人はよく長寿を全うできたものである。
 死の恐怖。死は誰もが迎えるものであり、それがいつかは分からない。だが悩みながら生きるのは人生の無駄遣いという師匠には賛同する。(こぼれツイートその1その2

 

追記

 カラーページの最後に星空のイラストがあるが、前巻と同様に下隅に師匠達の車がうっすらと見受けられる。

 

 

師匠達の容姿と装備:不明
殺害人数:10人以上(師匠達の累計殺害人数:54)
師匠達が狼藉を働いた回数:0、殺害動機が不明なのでノーカウント(累計数:9)
国の技術レベルと特産物等:国外
収穫:おそらく殺した相手の所持品

[ 小説第13巻 ] 19:33 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.30 Wednesday
キノの旅十三巻 百年後に本作品を読まれる方へ

●百年後に本作品を読まれる方へ
一言でいうなら:注意書き

 

 

内容

 百年後に読む人へのことわりとして、

・フィクションであること

・だれかを愚弄する目的で書かれたものではないこと

・今後百年の間に起きる事例を予言したものでなく、同様の事が起きたとしても単なる偶然であること

・本作中の違法行為について推奨するものではないこと

・本作中の違法行為を行っていけないこと

・本作中の猥褻・扇情的・暴力的表現は2009年においてはごく普通に使われていたこと

・本作品は本という媒体で売られていたこと

・本では42文字が一行で、17行が一頁(ページ)であること

・あとがきは当時ですら問題になってたこと

 

感想

 書くまでもないと思いきや、世の中には911事件を予言したのではという漫画家のイラストもある。そのため、あながち不必要だとは言い切れないかもしれない。

 

 

注:記事掲載の順列の都合上、投稿日時を操作。初投稿日2018/6/28

[ 小説第13巻 ] 19:35 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.30 Wednesday
キノの旅十三巻第一話 昔の話 感想

●昔の話 -Choice-
一言でいうなら:革命に関与した師匠達の話
名言:「自分だけは笑えるときに笑おうと思いますよ」


登場人物:師匠と弟子、シズと陸とティー(直接記述なし)、キノとエルメス(直接記述なし)
話の長さ:約30ページ
備考:戦闘あり・複数主人公

 


あらすじ
 行く先を千人以上の原始的な武器を持つ痩せ細った人々が立ちはだかっていた。師匠と弟子は50歳ぐらいの政治家の依頼により、彼を護衛しこの先を突破しなければならなかった。
 二日前、二人が入国しようとすると最初は断られた。この国は独裁政権による悪政が続いていたが、ついに限界が訪れ無政府状態になりかけているのだという。しばらくして、それを聞きつけた政治家の一人が入国と引き換えに護衛の依頼をしてきた。
 そして師匠達は行動を開始した。トラックで群衆のもとへ進撃。群衆達が近寄ってくると自動連射式グレネードで吹き飛ばした。トラックの中で震える政治家に、弟子は気楽そうに言う。気にすることはない、彼らの体は吹き飛んでも自分たちは痛みを感じない、私腹を肥やすとき貧民が苦しんでいるの感じないのと一緒。
 そんな調子で師匠達は進軍路をグレネードで確保しトラックで走破、包囲網突破に成功した。そして味方の部隊と合流、彼らと別れた。これからどうするかと弟子が聞くと、この武装トラックをさきほどの群衆に売り渡すという。危険じゃないのかと弟子、だがその時は皆殺しにすると師匠。

 

 その後はどうなったのか、どうして売ることにしたのかと森の中のログハウスの女の子。群衆にトラックを売ることで民衆側の攻撃力が上がり、結果的に騒動の被害がすくなくなるといい思ったと老婆。そして、助けた政治家も民衆もどうなったかも確かめなようがないという。全員が笑顔でいられる世界はあると思いますかと女の子。老婆はいいえと言い、名言を残す。

 

オチ
 シズ達は革命記念館に来ていた。目の前にあるトラックは重要な展示物であり、この兵器を革命の父である初代大統領が使ったことで被害が少なく済んだと言う。そしてそれに関わった二人の旅人を知らないかと聞かれた。

 

 話を聞いた女性の祖父は、国から逃げ今の国にやってきたのだという。そして身を粉にして働き大統領に上りつめた。それも元の国での反省と、二人の旅人への感謝からきていたそうだ。その旅人を知らないかと女性が聞くと、キノは知らないと言い、ちいさな笑顔を作った。


感想
 師匠達は多くの人を殺したが、どこまでも非道というわけではない話。自分たちが何気なく生きている瞬間、どこかでだれかが死んでいる。だが一人でみなを救うことができない。それならまず自分を大切にし、次にまわりの人に協力すれば、多くの人に命が行き渡りはしないだろうか。

 


師匠達の容姿と装備:自動式パースエイダー・リヴォルバー・ゴーグル・四輪の小型トラック・自動連射式グレネードランチャ―

キノの容姿と装備:黒いジャケット・リヴォルバー
殺害人数:60以上、威嚇殺害10人ほど+約千人の包囲網突破なので50人は殺してそう(師匠達の累計殺害人数:106)
師匠達が狼藉を働いた回数:0(累計数:7)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:なし

[ 小説第13巻 ] 00:14 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻第二話 家族の国 感想

●家族の国 -Divorce-
一言でいうなら:家族を変えることができる国
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約10ページ
備考:口語がメインの話

 

 

あらすじ
 国の住人が、外の世界について聞きたいとキノ達の元に来た。住人が聞いたのは、外の国では離族ができないのは本当なのかということだった。キノが離族が何か分からないでいると、離族とは離婚の家族版であり、子供も含めて家族をやめるというシステムとのこと。例えば、子供がこの家族を嫌だと言い申請すると家族をやめることができる。子供は一時的に国の施設に入れられるが、家族募集のデータベースに登録され、里親が気に入った子供を引き取るのだと言う。似たように親も離族ができ、元の家族と別れ新しい家族に入ることもできるのだという。
 どうしてそうするのかというキノに、好きでもない人間と一緒に食事をし同じ家で暮らしたいですかと住人。認めるキノ。続けて好きでもない子供のために働くなんて人生の無駄遣い、また家族の中で子供は親が養うため立場は弱いが、離族があることで高圧的な親からの児童虐待の防げるのだと言う。

 

オチ
 住人の話が終わりキノとエルメスだけになった。ところでとキノはエルメスに朝早く起きてと言った。するとエルメスは難しいね、ところでもう少し丁寧に運転できないと言った。するとキノは難しいね、ところで時々口が悪いのは直らないかと言った。口論が続いた。
 疲れたので口論を止めた。別の女性の住人がキノ達に家族にならないかと言った。キノは断った。


感想
 離族というシステム…現在こそこんな国ありえないと笑えるが、もしかしたら現実になる日が来るのかもしれない。そんなリアルさを感じた国。

 キノとエルメスが喧嘩状態になる希少な話である。

 

 

キノの容姿と装備:不明
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:25)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:36)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:28)
国の技術レベルと特産物等:現代・離族
収穫:なし

 

[ 小説第13巻 ] 00:42 - | comments(1) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻第三話 違法な国 感想

●違法な国 -Just Imagine It!-
一言でいうなら:架空の本でも犯罪を許さない国
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約20ページ
備考:他の話とリンク・追加考察予定

 


あらすじ
 森の中を走る5台のトラックの一団にキノはいた。キノは旅団の護衛しており、護衛している旅団の人たちは、この先の文芸に秀でた国で本をトラック一杯買い込むのだという。
 だが国に到着してみると、本を買うことができなくなっていた。なんでも、"違法文章"が法律により規制されることになったそうだ。それはつまり、現実にやって違法になることは小説の中で描くことも禁止なのである。旅団の頭領はこの国のさまざまな作品名を挙げどうなのかと聞くが、ことごとく犯罪にあたると却下された。それを規制して効果があったのかと聞くが、この規制のおかげで犯罪率は横ばいなのだそうだ。

 

オチ
 近くでトラックから大量の本が放棄されようとしていた。持ちだしてもいいと確認をとり、頭領は本を回収した。


感想
 過去には「本の国」という話があった。本があるのは共通しているが、こちらは文芸つまり創作が盛んなのに対し「本の国」は評論が盛んで自ら創作しないそうなので別の国らしい。またこの国の発想事態は「安全な国」に通ずるところがある、なのでそこと同じ結論「悪いのは物ではなく人間」という結論が出せそうだ。また作中にあなたの国では殺人は違法ですねという問いに、エルメスが前に言ったことがあると言いかけるが、「人を殺すことができる国」「徳を積む国」がそれにあたる。
 話の序盤、登場人物を説明する場面で「もうひとりはキノ。」と断定した文章なのは珍しいと思う。

 

追記

 作中、説明役の女性が「私見ですが、"万引き"などと呼ぶと簡単な行為に聞こえてしまうので嫌いです。"窃盗"と呼ぶべきかと」と言っているが、これは著者が強く思っているような気がする。この文章はどうもお話の流れにそぐわない気がするのと、個人的に管理人は"万引き"という言葉を簡単な行為を連想したことがないためである。

 

 

キノの容姿と装備:黒いジャケット・カノン・森の人・フルート
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:30)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:35)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:34)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:護衛の報酬・節約できた食料と燃料

[ 小説第13巻 ] 01:24 - | comments(1) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻第四話 旅人の国 感想

●旅人の国 -Last Will-
一言でいうなら:探している遺族は別にいた話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:シズと陸とティー、クロス
話の長さ:約30ページ
備考:世界地理描写

 

 

あらすじ
 南西に向かって走っていると、ある旅人に出会った。彼はクロスと名乗り、かつて故郷を救い亡くなった旅人の遺族に彼の偉業を伝えるため、徒歩で旅をしているのだと言う。そこでシズは彼をバギーに乗せていくことにした。目的の国に着き聞いたところ、すんなりと家族を特定することができた。彼らに会い旅人が五年前に故郷に多大な貢献をしたことまでを話した。それを聞いて遺族の両親は明るく喜んだ。そして死亡したと言うべきか否か並んでいると、ティーが両親にその人は今度いつ帰るのか聞いた。それを皮切りに、この両親が亡くなった旅人の両親でないと分かった。両親と別れ改めて旅人について調べると、死刑囚だったが恩赦で国外追放になった人物こそ例の旅人であり、遺族はすでに亡くなっていることが分かった。

 

オチ
 ティーにどうして最初の両親が遺族でないと分かったのかと聞くと、大切な人を待つ人はあんなに明るくないと言った。


感想
 ティーの洞察力により勘違いを防げた話。元祖キノを待つ母親のように、帰りを待つ人はつらい。

 

 

殺害人数:0(シズの累計殺害人数:27)
シズの主張が認められなかった回数:0(累計数:5)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:なし

 

[ 小説第13巻 ] 19:32 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻第五話 必要な国 感想

●必要な国 -Entertainer-
一言でいうなら:嫌々死刑に付き合わされる話
名言:「ボクは人殺しが好きではありません。そして、ボクが人を殺すのを期待し、それを見て楽しんでいる人がいるのは、より好きではありません」

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約70ページ
備考:戦闘あり

 

 

あらすじ
 訓練に必要だった木を見つけたキノは、いつものように射撃訓練をし、そういえばとキノは前に男に言われたことを思い出した。腰にパースエイダーをつけているのは「恐れ」であり、もっと他人を信じれば争いもなくなるそうだ。キノは人を殺すのはいつも人だと「恐れ」に関しては認めた。それを言った男はやはり治安の良い国の住人だった。
 目的の国に着くとこれまで殺害経験があるかと聞かれた。キノは正直に答えると、銃を所持したままでの滞在を認められた。滞在中はホテルをはじめエルメスのメンテナンス等、諸費用全てがタダだった。屋台で各グルメを満喫し公園で休んでいると、いきなり殺されかけた。だがキノは難なく返り討ちにした。その後も立て続けに別の3人から殺されそうになるがキノはいずれもいなした。その度に、裏で監視カメラの中継を見ていた国民が湧いた。


オチ
 出国の際、入国審査官からネタばらしをされた。キノを襲ってきた4人は死刑囚であり、この国で死刑囚の扱いに困った末に考案された、旅人に始末してもらうシステム「旅人刑」にキノは付き合わされたのだった。入国審査官はこのシステムがみなが納得するシステムだと言う。だがキノは名言と共にこの国には二度と来ないと宣言する。しかし入国審査官はこのシステムが必要なのでこれからも続けると言う。


感想
 間違っているはずなのに理論が通っていそうなので不愉快に感じるお話。旅人は滞在費全てがタダ+人によっては殺人快楽を得られる。国は死刑方法や死刑執行人の問題がなくなる。国民は死刑囚の処理+旅人の雄姿を拝める。死刑囚は旅人を殺せば国外追放という希望を持って生きられる。各々利益が見事に循環しているように見える。
 だが今回は珍しくキノの怒りが垣間見え、さらには二度とこの国にはこないと宣言までしている。これまでキノは殺しにうんざりする時はあれど、怒ることは少ない。これまで一番怒りを露わにしたのは「コロシアム」である。
 話の冒頭、治安の良い国の人がパースエイダーを無くそうと主張している。現実世界においてもみながさまざまな事を主張し、なかでも有名人の発言は目立った形で取り上げられる。だが彼らの主張には果たして一貫性があるのかと首をかしげることがある。例えば紛争地帯で平和主義を声高に叫べるのかという事。個人が何を主張するかは自由だが、環境が変わっても同じ事を言う責任を持ってほしい。

 

追記

 さらにもっと話の冒頭、銃の訓練を終えたキノは誰もいない草原であっても常に一丁は撃てる状態にするとある。実は小説一巻においては二丁同時に分解している疑惑(キノにしては不用心、著者のミスという意味で)があるのだが、これを書いている際は徹底しているようである。

 

 

キノの容姿と装備:十代の中頃・黒いジャケット・銀色のフレームのゴーグル・カノン・森の人・鞄ほか装備品一式記述
エルメスの言い間違い:背後の縁談→正:最後の晩餐(累計言い間違い数:31)
殺害人数:3(キノの累計殺害人数:38)
キノが危害を加えられそうになった回数:4(累計数:338)
国の技術レベルと特産物等:近未来(電気自動車)
収穫:豪華な食事・補給やメンテナンスも含め滞在にかかる費用全てタダ

 

[ 小説第13巻 ] 21:06 - | comments(1) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻エピローグ・プロローグ この世界の話b・a 感想

●この世界の話 -It Happens.-
一言でいうなら:鹿を仕留めた話
名言:(強いてあげるものはなし)


登場人物:キノとエルメス
話の長さ:数ページ

 


bパートあらすじ
 遠くに大きな土煙と黒い影が見え、それはどんどん大きくなってきた。サイだとエルメス。そしてそれらの先には動けない小鹿と親鹿がいた。いまから急げば小鹿のもとに行けるかとキノ。間に合うが戻るとなるとミスが命取りになるとエルメス。止めたと言いスコープを覗くキノ。逃げる親鹿。そして小鹿はサイの群れに飲み込まれた。小鹿がいたあたりは細かい肉片が散らばっていた。キノは携帯食糧を食べ始めた。肉片はハゲタカが食べ始めた。ひどいなーとキノ。この世界ではよくあることとエルメス。


aパートあらすじ
 サバンナにてキノはフルートのスコープを覗いていた。エルメスが射撃に作用する環境情報をキノに伝えた。キノは了解と言いスコープを調整、銃を撃った。小鹿に命中したが、狙っていた胸に当てることができなかった。一緒にいた親鹿が子供にまとわりついた。なのでキノは直接小鹿の元へ行こうとした。しかし何かの震動を感知したエルメスがそれを止めた。


感想
 この世界で自然と共に生きているとよくある話。人間・鹿・サイ・ハゲタカ。それぞれが行動し、時には残酷なことも起こりつつ、それが自然の摂理となる。

 

追記

 最初に読んだ時は意識していなかったのだが、このお話は2つの見方がある。bパートだけ読めばキノは小鹿を助けようとしサイをひどいと言ったようにみえるが、aパートと合わせて読むとキノは獲物を取られたのをひどいという意味だったのが判明するのである。

 

 

キノの容姿と装備:白いシャツ・黒いベスト・スコープ付きフルート
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:31)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:38)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:38)
国の技術レベルと特産物等:国外
収穫:なし

 

[ 小説第13巻 ] 21:50 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.08.31 Thursday
キノの旅十三巻スペシャル収録 いろいろな話 感想

●いろいろな話 -a Beautiful Dreamer-
一言でいうなら:フリーダムな11歳少女キノの夢
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス、師匠と弟子、シズと陸とティー、ニーミャ、戦車、ラファの幽霊、絵描き、イーニッド
話の長さ:約30ページ
備考:複数主人公・他の話とリンク

 

 

2024/1/16〜コメントの指摘をうけ修正

 

あらすじ
 いつもの装備でキノがいた。いろいろな事を言いそれを旅人っぽいと言うキノ。旅人じゃんとエルメス。そこへ妙齢の師匠と荷物持ちがやってきた。そして一緒に旅することになった。

 

「仲のいい国」 -Born to be a Dictator-
 道をモトラドと車が走っていた。空ではニーミャの飛行機(「魔女の国」登場)と浮遊戦車(「戦車の話」登場)が飛んでいた。キノ達はいろいろ話しつつ、国に入った。中は平和そうだった。国長に夕食に誘われ一行は食事をした。ふと食事に参加していた国の住人が、肉が焦げているので交換してと言った。すると、国長は和を乱したということで死刑を宣告、ドアの向こうで即執行された。皆と仲良く暮らすため国長の命令は絶対であり、争いとなる意見の違いは許されないのだという。その直後国長が肉を食べ窒息死した。すると別の男が国長となった。国長は最年長の者がなると決まっているらしい。

 

「与える国」 -Give and Take-
 不慮の事故に遭遇した場合、臓器提供をしなければならない国に来た。各々何度も殺されそうになった。事情を知る住人が、臓器を待つ愛する家族のためならなんでもするものだと言った。

 

「輝いている国」 -Creators-
 国に入るとこの国は素晴らしいと住人達が口々に言った。なんでも一万年以上も前から立派な文明があったり、偉大な発明はこの国が発明したのだそうだ。証拠があるのとエルメスが聞くと、なにやらとある辞典にしっかりそれが記録されているとのこと。それを作ったのはだれかというと、我が国の人だそうだ。

 

「売っている国」 -Sales Talk-
 一行は陸とその飼い主とティーに会った。飼い主と言われ抗議するシズ。そのシズなのだが、最近肩が重くて困っているらしい。すると霊感のある荷物持ちが幽霊がついている、と言い終わらないうちに師匠にボコボコにされた。そして2人は車に乗りどこかへ行ってしまった。シズの肩にはどうやらラファ(「祝福のつもり」登場)が取り憑いているらしいが、信じないとシズ。キノとエルメス、そしてシズ達は国に向かった。入った国で政治家の集団が話しかけてきた。一向にこの国に戦争をしかけないかと言った彼ら。この国は戦争を禁じており、宣戦布告してくれれば即降伏するのだという。そして、旅人の代理で自分たちが政治仕事を取り仕切るとのこと。一行は断り国を出た。ティーがシズの肩をじっと見て、幽霊がシズのことを大好きだと言ったとシズに伝えた。みなは黙った。

 

「都会の国」 -Don't Stop Us!-
 シズ達と別れ道を走っていると白骨死体があった。その先にある国は科学がとても発達していた。住人に道中の白骨死体のことを聞くと、それは旅に憧れた住人の死体だそうだ。この国では旅に憧れる人がいるが、文明の発達した住人なので旅の知識どころか何が必要なのかも把握できず、国を出てすぐ死んでしまうらしい。旅を禁止すればと聞くと、それだと人口が減らないでしょと審査官。
 国を出てどこに行こうかと話していると、自分たちの後ろで動く国が猛スピードで動き回っていたり(「迷惑な国」登場)、戦車が大砲を撃っていたり、それを書いている青年(「絵の話」登場)がいたり、イーニッド(「終わってしまった話」登場)が待ち伏せ攻撃用の穴を掘っていたり、水爆売りの店(「店の話」登場)に行列ができていたり、高い塔(「塔の国」登場)がボロボロ崩れていたりした。そしてエルメスがこれは夢でそろそろ起きろと言った。

 


オチ
 少女は泣きながら目をさまし、いままでのことが夢だと理解した。そして両親に夢を見たと言い、さらにお父さんとお母さんはそんな夢を見たことがないかと聞くと、大人は夢を見ないんだよと言われた。そして来月少女は十二歳の誕生日を迎える。

 


感想
 この話について感想を言うべきなのだが、それよりもこの記事を書くのに苦労した。お話に関しては…社会風刺が目立つとだけ。

 

 

追記

 なかなか砕けたお話。夢オチのせいかいつもの整然とした書体は投げ捨て、その場のノリでフリーダムな表現となっている。若いころの師匠とキノの出会いは本編では実現不可なので、もしそうなったらこのようになる。今回の国々は取扱いが難ということで、あえて複数話でまとめそれぞれを目立たないようしたのか。

 それにしてもラストで大人は夢を見ないと言うが、これはどういった意味なのだろうか。単純な風刺とも思えるが、実は「大人の国」における大人の設定に深く関わっている気がしてならない。

 

 

 

キノの容姿と装備:茶色のコート・黒のジャケット・リヴォルバー
エルメスの言い間違い:慈善事業→正:自然葬(累計言い間違い数:32)
殺害人数:
キノ1人以上、山賊退治(キノの累計殺害人数:39)
師匠達2人以上、山賊と突っ込んできたトラック運転手(師匠達の累計殺害人数:116)
キノが危害を加えられそうになった回数:4、山賊と臓器目当て3回(累計数:42)

師匠達が狼藉を働いた回数:1、最後の記述にある脅迫(累計数:10)
国の技術レベルと特産物等:各々
収穫:なし

[ 小説第13巻 ] 00:04 - | comments(2) | - |2017.09.01 Friday
キノの旅十三巻 あとがき 感想

●あとがき -Preface-
一言でいうなら:編集部が著者に質問

 

 

内容
 著者が読者の質問に多く答えたい手前、さまざまな質問を編集部にしてもらい答えることにした。ペンネームの由来、生まれた年、身体的特徴、好きな飲食物、趣味、人生で強く印象に残っている各メディアの作品(多くのページが割かれている)、バイクについて、執筆でのこと、キャラクター名の由来、収入関連等。

 

感想
 20ページ以上にわたって述べられる著者のインタビュー。特に著者の本・映画・ゲーム・テレビアニメ・漫画のベスト5について一通り紹介されており、著者の好みや感性をより知るうえで、これほどまでに適した資料はないのでは。

 

追記

 現時点で大きな事故や病気にかかったことがないとあるが、小説16巻で大きな事故に巻き込まれ、それを機にやりたいことはやろうと決めたとある。それはキノの旅本編にも大きく影響するのかもしれない。

[ 小説第13巻 ] 19:49 - | comments(0) | trackbacks(0) |2017.09.01 Friday