キノの旅を総括したい

"世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい"
そんな世界を余すことなく総括する、キノの旅まとめサイト。ネタバレ注意


 
 〜 管理人コメント 〜

学園キノ6巻が2019年10月
より発売中です。学園キノは
今のところレビュー予定は
ありません。申し訳ない


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キノの旅二十二巻 巻末特別短編「二十年目のボク達」(あとがき) 感想

●二十年目のボク達 -Traveling for Two Decades-
一言でいうなら:二十年後のキノ達

 


内容
 前半部は32歳になったキノのお話。後半部はそんなお話なんて収録できないという著者と編集部のやりとり。さらに黒星さんによる二十年後のキノ達のイラスト。

 

あらすじ
 「あれから二十年か……」。赤い花が地平線の向こうまで咲き誇る草原で、大人になったキノとエルメスが話していた。十二歳の誕生日直前に国を飛び出し、明日でキノは三十二歳になる。二十年…シズさんは太ったオッサンになっており死ぬ程驚いた。ティファナちゃん(ティー)は国一番の医者になっていた。陸君は残念ながら亡くなっていたが、陸二世達は可愛かった。

 

 著者と編集部のやりとりが始まる。さきほど送ったお話はどうだったかと聞きボツだと言われた。あーだこーだのやりとりを経て、あとがきに収録することで収まった。次に書く作品について「それはもちろん、が―」というところで通話が途絶えた。


感想
 32歳。これを書いている管理人もちょうどその年齢である。これでも初めてキノの旅を手にしたのは高校生だった。今回のあとがきは単なる冗談のお話に思きや、実はキノの旅における長年の謎を解き明かす重要なお話なのかもしれない。気になるポイントが2つある。

 

 1つ目は、キノが32歳の大人になったという点である。ネット上にてキノは大人になる手術を受けていない=子供のままの不老説というものが存在する。しかし今回のお話はその説に対する牽制になったと思える。また著者発言として2009年と一昔前であるが、"サザエさんのワカメちゃんのように歳をとる考えがない"という2chレスが存在する。

 2つ目は、長年の謎「死ぬほど驚くかもね」についてである。「船の国」にてシズと別れた際にキノが発したこの台詞、これが何を意味するのかファンの間で長年謎になっている(まとめ記事)。そして今回のあとがきでは「ああ、シズさんか。見た時は、死ぬ程驚いたよ。〜」という文章がある。時が流れシズが太ったおっさんになった事に対する台詞だが、結果的に死ぬほど驚いており、これは長年の謎に対する作者からの解答とも受け取れる。これが解答だとしたら、船の国においてキノは何について「死ぬほど驚くかもね」と言ったかというと「シズの変わり果てた容姿を見たら」ということになる。


 お話の最後で次回作について「が―」と言いかけ途絶えるが、これは22巻発売から3ヶ月後に発売された学園キノ6巻を意味する。頭文字が「が」であることから学園キノであったが、ガンゲイルオンラインの可能性もあった。そしてその次のページで黒星さんによる二十年後の各キャラクター達のイラストが。美しい妙齢のキノに加え、太ったことで威圧感のあるシズも登場し衝撃を受ける。22巻は本当に黒星さんのデザインが印象的である。

 


エルメスの言い間違い:末期のジェラシー悪魔で→正:三つ子の魂百まで(あとがきなので累計には加算しない)

 

 

[ 小説第22巻 ] 20:29 - | comments(0) | - |2019.12.30 Monday
キノの旅二十二巻エピローグ・プロローグ 川の畔でb・a 感想

●川の畔で
一言でいうなら:飢えから家族を殺めた瞬間食料が湧いて出た話
名言:(強いてあげるものはなし)


登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約10ページ

 


aパートあらすじ
 これを読んでいる人へ。妻と三人の子供の死体を前にこの手紙を書いている。私がみなを首を絞めて殺した。私達は独裁者が君臨し、迫害と差別と飢餓にまみれた祖国から逃げてきた。しかしどこの国も受け入れてくれず、食料も採れなくなった。そしてこの川に辿り着いたが、何日待っても川には魚一匹いない。苦しみながら餓死するよりも自ら死を選ぶことにした。だから私はみなを殺した。これを書いてから自分も死ぬつもりだ。もうすぐ日が昇る。

 

 があああちくしょう!くそくそくそ! もう何もかも嫌になった。これを書き終えたら私は即座に自分の頭を撃ち抜く。一秒たりとも、こんな世界にいたくない。

 

 そんな手紙をキノは読み終えた。そこは川が流れる森で、付近には銃で自殺した男の死体があった。最後に怒りとともに書き殴った文字は何だったんだろうとキノ。すると川の下流からざわめく音が聞こえてきた。


bパートあらすじ
 そして川面が踊り出した。静かだった川が急に大音響に変わり、鮭の大群が現れた。どうやら昨日の朝が鮭の遡上(そじょう)の初日だったようだ。川から飛び出た鮭がキノの前に落ちた。「キノ、朝ご飯ゲット」とエルメスが言った。それを複雑そうにキノは眺め、そして頭を撃ち抜かれた一人の死体を見た。


感想
 あと少し待っていればみな助かったやるせないお話。しかしこれまで何もかもうまくいっていなかった上、この川に来てからも何日も待っていたのだから浅慮なわけがない。このお話を読むと、2ちゃんねる掲示板にてバットエンド映画と名高い「ミスト」という洋画を思い出す。あと少し待っていればという点が一致している。

 


キノの容姿と装備:茶色のコート・フルート
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:50)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:58)
国の技術レベルと特産物等:国外
収穫:鮭

 

[ 小説第22巻 ] 22:26 - | comments(0) | - |2019.12.27 Friday
キノの旅二十二巻第七話 餌の国 感想

●餌の国 -the Cage-
一言でいうなら:猛獣の餌になりかけた話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス、デュナミス(獣の名前)
話の長さ:約50ページ
備考:ひと気のない国

 

 


あらすじ
 ある国への偵察の仕事を引き受けた。依頼主の商人によると、ここしばらく交流が途絶えているらしい。最初は引き受けるか迷ったが、絶品の肉料理があると聞きキノは引き受けることにした。問題の国はひと気がなく町は綺麗なままだった。さらに探索していると大きなドームの建物を見つけた。中には人骨が転がっており、野生動物に食べられた跡があった。そして入口に一人の女性が立っていることに気付いた。こちらが気づくと女性は逃げ出した。追いついてこちらの目的を明かし、この国で何があったかを聞き出すことができた。

 

 この国ではかつて大きな猫のような獣を国で飼っていた。デュナミスと名付けられたその獣は国民全員から愛された。しかし穀物の病気が発生、国を維持するためデュナミスを安楽死させることになった。唯一いた飼育員は猛反対したが決定は覆らなかった。そこで飼育員は国民みなを殺害することにした。デュナミスの檻を開け放ち、国民全員がドームへ避難したところに火のついた枯草をかき入れ、みなを窒息死させた。

 


オチ
 なぜ語り手の女性は生きているのかとキノが聞くと、彼女が飼育員だからとエルメスは答えた。同時に彼女が「デュナミス!」と叫び、呼ばれた巨大な獣が現れた。キノはエルメスにまたがりドームへと逃げ込んだ。作戦があるというエルメスに従いドームのほぼ中央の位置で止まった。いよいよ獣がキノに迫ったが、突然悲鳴を上げて倒れた。エルメスは獣にしか聞こえない周波数で声を発し、それがドームの反響と相まって獣を昏倒させることに成功したのだった。黒幕の女性がデュナミスに駆け寄ると、それをデュナミスが食べた。キノとエルメスはそれを刺激しないよう脇から回り込み、ドームの入り口までくると一目散に逃げた。

 

 国を後にしエルメスは言った。このことを商人に包み隠さず言えば、珍獣として商人達により生け捕りにされるだろう。しかし言わなければここで餓死する。「どうする?」とエルメスはキノに尋ねた。

 


感想
 猫のような巨大な獣の餌になりかけた話。獣の正体についてネコ科特有のしなやかな筋肉を持ち、黄色を基本に黒い縞(しま)と斑(ぶち)がちりばめられていることから虎かと思えたが、後のエルメスの解説によると実験的に掛け合わされたいろいろな種の混血で、いわゆる合成獣キメラのような存在らしい。

 

 お話の序盤、「ほら、"モトラドの運転はスポーツだから、ちゃんと食べておけ"云々」の台詞を以前聞いたとあるが、これはキノの旅一巻第一話「人の痛みが分かる国」での台詞である。以前も空腹状態で運転したことからこのような台詞が飛び出したが、これに限らずこのお話には多くの類似エピソードを見出すことができる。ひと気のない国に着く展開は数多く、なかでも「つながっている国」では誰もいない国でドーム状の建物を発見している。アニメキノの旅ASのBD特典「円盤の国」キノ編では凶暴な野生児の少女に襲われ、エルメスが壁の反響を利用し少女を撃退した。

 

 国に着く前、キノは夕食を取る。「携帯食料のスープ、ビーフジャーキー入り」と題した料理は、外見的には泥のようだと解説が入る。作り方の工程も記述されているが、なんだかこれ「届ける話」での陸のご飯と似ているような…。


 国に辿り着きとんだ災難に見舞われたキノであるが、そもそもこの国に来た理由は絶品の肉料理があると聞いたためである。しかし料理どころではなく撤退を余儀なくされた。また黒幕である女性によると、国の人達は肉を一切食べないと言っている(262p)。これはどういう事か、なにか裏があるのか。立派な石組みの建物を作り上げた先住民の存在など設定を洗い流してみたが、矛盾を解く推論は思い浮かばなかった。しかしこちらのレビューサイトにて面白い意見が。"謎の肉料理は……キノを釣る「餌」?"とのこと。これならしっくりきた。

 

 国民全員の殺害方法としてドームの中で窒息という手法が取られたが、これを読んで「風の谷のナウシカ」の漫画版を思い出した。こちらは殺害ではないが、戦火を逃れるために住人が大きな建物に籠り、暗かったことから火を焚いてしまいみなが窒息死するという展開があった。

 

 

 

キノの容姿と装備:防寒着・黒いジャケット・カノン・森の人・(フルート明確に未所持)・ゴーグル
エルメスの言い間違い:エルメスは間違えていないが商人が「トロラド」と間違えたのをエルメスが「モトラド」だと訂正、商人は「そうそれ!」と返した(累計言い間違い数:50)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:1(累計数:58)
国の技術レベルと特産物等:中世・見事な石組みの建物
収穫:偵察の報酬

[ 小説第22巻 ] 21:46 - | comments(0) | - |2019.12.25 Wednesday
キノの旅二十二巻第六話 来年の予定 感想

●来年の予定 -Lucky Girls-
一言でいうなら:イライザの逆転劇
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:フォトとソウ、イライザ
話の長さ:約40ページ

 

 

あらすじ
 町主催音楽フェスの撮影依頼を受けた。三日間の撮影のはハードなため、助手を派遣してもらうことになった。その人は力持ちの若い女性でレスリングの優勝経験まであるが、仕事が長続きせず働いていないらしい。それを聞いてソウはどっかの国で言う「ニート」という言葉を思い出した。その女性、イライザに会ってみると「負けそうなゴリラ」だなとソウは思った。背が高い上筋肉が備わっているが、やけに気弱そうに見えた。フォトのサポートもことごとくうまくいかず、荷物番にしかならなかった。

 

 そのまま最終日を迎えたが、あいにくの大雨だった。それでもフェスは決行されたが、そのせいでフォトは足を捻ってしまった。それでも撮影を続けるつもりでいるフォトをソウがなだめていると、イライザが「私が、フォトさんを担いでいきます!」と言った。イライザはフォトを悠々と担いで動き回り、撮影を続けることができた。

 


オチ
 メインステージでは一番の目玉女性歌手が歌い始めた。しかしその歌手が調子に乗りステージでジャンプしたため、滑ってステージから転落した。それをちょうど受け止めたのがイライザだった。歌手に誘われステージに上がったイライザは、話の流れで自らの歌声を披露することになった。それは彼女ならではのパワフルな声で、同時に素晴らしい歌声であった。歌手から讃えられなぜ今年は出なかったのか、来年はどうするかと聞かれた。ソウによるイライザにしか聞こえない声援もあり、来年は出ると答えた。

 

 後日、フェスを振り返りフォトは来年も行くと言った。そこでソウは「助手はどうする?」と訊ねた。

 


感想
 まるでうまくいかなかったイライザが成功を掴むお話。本文を読み終えイライザの挿絵が登場する。それを初めて見たときは「うわっ」と驚いてしまった。女性ながら実に力を感じる容姿で、話は聞いていたものの実際に絵で見るとインパクトがあった。

 

 作中わざわざ他国の言葉と断り「ニート」という単語を登場させている。著者時雨沢先生はご自身の経験からインタビュー等でも幾度かこの単語に触れており、結構気にしているように思える。しかし個人的にはそこまで気にすることではないのでは。問題なのは今現在のことであり、人気シリーズ作家という実績がある今、過去のことは霞んで見える。

 

 作中のイライザもこれまでまるでうまくいかなかったのが、新しい人生を見出すことができたので良かった。ソウの台詞「〜。でも、自分のできることをできるだけやり通して、結果的には凄まじい幸運を手に入れて、今の生活がある。〜」というのは、フォトとイライザ、そして著者にも共通する事実なのだろう。誰しもが終わりにせず耐しのぐことができれば、良い方向に道が開けると思う。

 

 シリーズにおけるフォトのお話の特徴として、ごく一部の例外を除き最新話ほど作中時系列の最新である点があげられる。根拠は年齢記述および季節描写によるもので、詳細はフォトキャラクター記事末尾にまとめてある。しかし、今回季節は「暦の上では夏は終わっている」とあり、既存のお話より過去に遡ったことが判明した。最新話ほど時間が経過しているならそろそろフォトが18歳になるのではと思っていたが、今回過去に遡ったことで「フォトは17歳」という設定が固定されたようだ。

 

 

 

[ 小説第22巻 ] 00:28 - | comments(0) | - |2019.12.18 Wednesday
キノの旅二十二巻第五話 届ける話 感想

●届ける話 -Delivery-
一言でいうなら:シズと陸と出会い
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:シズ(作中言及なし、かわりにセーター男やパーカー男)と陸
話の長さ:約40ページ
備考:ホヴィー登場

 


あらすじ
 男は傭兵団の隊長から仕事を引き受けた。戦闘ではなくお遣いで、ここより七百キロメート北方にある王国へ荷物を届ける仕事だった。荷物の中身は聞いても教えてくれなかった。バギーを飛ばし、夜が近づいたので休もうとして異臭に気付いた。臭いの原因は、荷物の中身である犬とその糞であった。それを皮切りに男は慣れない犬の世話をする羽目になった。目的地へ進むこともままならず、吠えられ噛まれながら排泄や食事の世話をした。しかし、日数が経つと段々と円滑にコミュニケーションが取れるようになった。

 

オチ
 念願である目的地の国に到着した。しかしそこでは黒い煙と砲声が轟いていた。しばらく待ってから門に行くと、革命が成功し王家が倒されたと門番に聞いた。傭兵団と合流し真相を聞かされる。犬の取り寄せは革命支援依頼の隠れ蓑であり、革命派の一人が本来出られない国外に出るため、犬を買いにいくフリをして革命を支援してくれる国や傭兵を探したのだった。そして傭兵団の協力のもと革命が成功した今、犬を届ける仕事はどうでもよかったのだ。
 犬を受け取るはずだった主の死体を聞き出しそれを見る。女の子の死体で右手に紙が握られていた。紙には女の子と白い犬が描かれ、犬の名前は「陸」だった。お前の名前は陸でご主人様は死んだと犬に呟くと、「そうですか」と返事があった。急に犬が喋れるようになっていた。人間の数倍の速度で歳を取るせいだと陸は言い、さらにあなたの僕(しもべ)になると言った。仕事を終えた男はいい機会なので傭兵団を抜けることにした。出国時「お名前を、教えてください」と助手席についた陸が言った。


感想
 シズと陸の旅の原点、もとい犬の世話をするお話。生き物の世話は大変だとつくづく思う反面、苦労を経てうまく回り始ればやはり良いものだと感じた。このお話でシズと陸が出会い、「祝福のつもり」へと繋がることになる。そこでシズはある少女を失い、それによりシズに幽霊が取り憑くという冗談話があるのだが、今回のお話も似ていて取り憑く先は陸かもしれない。

 

 今回注目したいのは「名前」という単語である。作中「名前」が使われているのは、序盤の出発時「〜。お前のことは忘れないよ。ところで、名前なんだっけ?」(145p)と傭兵団から言われた台詞と、終盤陸がシズに名前を教えてほしいと催促した二つの台詞である。ここから読み取れるのは、傭兵団からは仲間であるはずなのに名前を知られておらず、彼らとは仲間になりきれていないのに対し、陸からは僕(しもべ)として尽くすべく名前を知りたがっているのである。

 

 ここで振り返りたいのが第三話「取り替える国」である。こちらでも「名前」が使われる台詞が登場しており、一つ目は少女が名乗ろうとして「それは要りません。私達も名乗らないので」と遮った師匠の台詞。もう一つは最後で旅の同行人になった少女に「あなたの、お名前は?」と尋ねた師匠の台詞である。師匠は当初お互い名前を明かさないことにした。これは必要以上の深入りを避けたのだと思う。しかし最後では逆に名前を求めた。これは今後師匠が少女に深く関わっていくことを宣言したように思える。

 


殺害人数:0(シズの累計殺害人数:27)
シズの主張が認められなかった回数:0(累計数:6)
国の技術レベルと特産物等:中世
収穫:陸が仲間になった

 

[ 小説第22巻 ] 22:39 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.28 Thursday
キノの旅二十二巻第四話 議論の国 感想

●議論の国 -Discussion Maker-
一言でいうなら:徹底議論にも裏があった話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約20ページ
備考:ホヴィー登場

 


あらすじ
 広大な国土の一部で山火事が起きていた。住宅地までは火が及んでいないものの、住人達は消すつもりがないようだった。なぜ消さないのかと疑問に思っていると、TV中継で火事を消すか消すまいかの議論がなされていた。この国では「議論が続く限り絶対に行動を起こさない」という決まりがあり、代表議会で議論が決着しない限り消火はしないのだという。それを話してくれたホテルマンはこの制度を素晴らしいものだと自負していた。だが時間が経ち、風向きが変わったことで火の手が住宅地に及んだ。火は消し止められたものの事前に消火指示を出さなかった代表議会に非難が及んだ。しかし「議論中でした!」という返答にこの国の住人は黙るしかなかった。

 

オチ
 出国したキノの前にトラックが現れた。さきほどの国の商人で再建のための資材を買いにいくという。するとエルメスが、消火反対派に幾ら払ったのかと聞いた。商人はニヤリと笑い答えられないなと言う。時間稼ぎによる火事の被害を期待した建築業界と商人が、反対派に賄賂を渡したようだった。あのルール変えるつもりはないのかと聞くと、議論中さと商人は答えた。

 

感想
 徹底議論をしているはずが裏があったというお話。「議論が尽くされていない」という台詞を聞いたことがあるが、徹底議論したところで裏から手が回っているのなら意味がない。システムを人が作る以上、どこかに穴が発生してしまうということか。奇しくも小説二十二巻発売から約一ヶ月経った2019年8月頃、アマゾンの大規模火災がニュースとなった。この件について管理人は当時あまり関心を寄せず、今回を機に改めて調べてみたもののあまり要領を得なかった。ただ「議論の国」も現実の出来事も、議論の矛先が火事でなく別のところに移ってしまっている気がする。

 

 作中、二日目の朝になぜかエルメスが起きていてキノが疑問に思うという描写がある。これはキノが寝ているうちに火の手が及ばないよう、エルメスが夜通し警戒していたということか。また、このお話でも新たなホヴィーの設定が明かされた。遠路だとホヴィーの燃料が尽きてしまうため、そのかわりに地面を走る車両を使うそうだ。かつて第五巻三話「店の話」では、リフター加熱にともなう故障は素人には対処できないため旅に向いているともあった。

 


キノの容姿と装備:白いシャツ・黒いベスト・カノン
エルメスの言い間違い:なし、カウチポテトは正しく言った模様(累計言い間違い数:50)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:57)
国の技術レベルと特産物等:近未来
収穫:無料の宿と食事

 

[ 小説第22巻 ] 19:34 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.18 Monday
キノの旅二十二巻第三話 取り替える国 感想

●取り替える国 -Changeling-
一言でいうなら:赤ちゃんを取り替えられた話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:師匠と弟子、まだ名前を聞いていない少女
話の長さ:約60ページ
備考:戦闘あり

 

 


あらすじ
 遠路はるばる辿り着いた国は貧富の差が激しく、治安の問題から武器の持ち込みが禁止されていた。師匠達は商売で大儲けしそれぞれの夜を過ごした。翌朝、別れ道をどちらへ進んだものかと考えていると、車の前に一人の女の子が飛び出してきた。十二、三歳ほどの少女は五ヶ月前に両親を亡くし一人暮らしをしていたが、ここしばらく誰かに見られている気がし恐怖心から逃げてきたのだという。事情を聞いた師匠は彼女の家に同行することにした。豪華な家に入ると近くに越してきたという女性が訪問してきて、門を開けた途端ナイフを取り出した。丸腰であった師匠はすぐに相棒を女性に向け突き飛ばし、相棒は負傷しつつも女性を気絶させた。

 

 通報し2名の警察が到着。捕まえた女性から話を聞くと、少女の両親を殺したのは自分だと明かした。しかし自分は悪くない、そこにいる少女は私の娘だと言い放った。金持ちと病院がグルになり、貧民である自分から子供を取り上げたのだと。突拍子もない話に思えたがそれは事実のようだった。裁判でこの事実をぶちまけ金持ちに怒りをぶつけるという。それを聞いた中年の警官は、自分もスラム上がりだからという理由で乗り気になった。

 

 

オチ
 そんな中年の警官をもう片方の若い警官が撃ち殺した。流産したお金持ちのために貧乏人の子供取り替えることは慣例で、病院による取り替え行為でお金持ちは報酬を払い、それにより病院は安定した経営ができるのだと若い警官は言う。そして我が子が裕福な環境と貧しい環境、どちらが幸せかと言う。実は若い警官も「取り替え子」だったのだ。血の繋がっていない金持ちの親に育てられた彼は、育ての親こそ最高の親だと言う。そして少女に銃を差し出し敵討ちをしないかという。少女はそれを亡くなった両親は望んでいない拒否。すると若い警官は捕まえていた女性を殺害、次は少女の番となったとき、少女は財産の全てを報酬に師匠達にこの国から連れ出すよう言った。それを聞いた師匠達はすぐさま反撃し男を気絶させた。


 数日後、師匠達の車が出国した。それを頭に包帯を巻いた私服の男が睨んでいた。買い込んだ荷物の中には少女がいた。師匠は初めて「あなたの、お名前は?」と少女に聞いた。

 


感想
 産んだ子をすり替る「取り替え子」をめぐるお話。裕福な環境で育つのと貧しい環境で育つのはどちらが幸せか、価値を認めてくれるところに行かなければ輝く者も輝けないという意見は正しいように思える。ただ発言主は若い警官であり悪者なのだから否定したいところ。しかし人権侵害などの単語が浮かぶもののどうもピンとくる言葉が浮かばなかった。ここは視点を変えてみたい。当たり前の事だがこのお話は「キノの旅」に収録されているお話である。これまでキノの旅では、さまざまな国の人々が有言実行と引き換えに凄まじい弊害を見せつけてくれた(多数決を順守するあまり一人だけになってしまったり)。この警官もその一例だと捉えれば…つまり「現実を伴わない」主張だと思えば否定することができそうである。

 

 物語の序盤、相棒は羽目を外すと言うと夜の街へ繰り出し朝帰りをする。具体的な記述はないが、これまでこういった類の話はなかったので意外だった。師匠と相棒はそういう関係でないと思われるが、かといってほかの人に手を出すとも思えない。
 師匠は入国時に武器を取り上げられ丸腰だったがやはり強かった。武器を取り上げられた際師匠は「身の回りにあるものを、なんでも武器にすればいいだけです」と言ったが、結果身の回りにあった相棒を突き飛ばし武器にした。相変わらず師匠は鬼だった。
 管理人は小説22巻は今後のシリーズ展開を占う重要な巻だと捉えている。それを踏まえ、師匠達に旅の仲間が加わったことはシリーズ展開の拡大に思える。しかし逆に考えると師匠達の旅を劇変させる要素であり、それゆえに旅の終わりのきっかけとなるのではとも危惧している。

 


師匠達の容姿と装備:リヴォルバー・パースエイダー・ライフル
殺害人数:0(師匠達の累計殺害人数:120)
師匠達が狼藉を働いた回数:0(累計数:12)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:車に積めるだけの少女の財産

 

[ 小説第22巻 ] 21:44 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.01 Friday