キノの旅を総括したい

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 〜 管理人コメント 〜

学園キノ6巻が2019年10月
より発売中です。学園キノは
今のところレビュー予定は
ありません。申し訳ない


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キノの旅二十二巻第五話 届ける話 感想

●届ける話 -Delivery-
一言でいうなら:シズと陸と出会い
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:シズ(作中言及なし、かわりにセーター男やパーカー男)と陸
話の長さ:約40ページ
備考:ホヴィー登場

 


あらすじ
 男は傭兵団の隊長から仕事を引き受けた。戦闘ではなくお遣いで、ここより七百キロメート北方にある王国へ荷物を届ける仕事だった。荷物の中身は聞いても教えてくれなかった。バギーを飛ばし、夜が近づいたので休もうとして異臭に気付いた。臭いの原因は、荷物の中身である犬とその糞であった。それを皮切りに男は慣れない犬の世話をする羽目になった。目的地へ進むこともままならず、吠えられ噛まれながら排泄や食事の世話をした。しかし、日数が経つと段々と円滑にコミュニケーションが取れるようになった。

 

オチ
 念願である目的地の国に到着した。しかしそこでは黒い煙と砲声が轟いていた。しばらく待ってから門に行くと、革命が成功し王家が倒されたと門番に聞いた。傭兵団と合流し真相を聞かされる。犬の取り寄せは革命支援依頼の隠れ蓑であり、革命派の一人が本来出られない国外に出るため、犬を買いにいくフリをして革命を支援してくれる国や傭兵を探したのだった。そして傭兵団の協力のもと革命が成功した今、犬を届ける仕事はどうでもよかったのだ。
 犬を受け取るはずだった主の死体を聞き出しそれを見る。女の子の死体で右手に紙が握られていた。紙には女の子と白い犬が描かれ、犬の名前は「陸」だった。お前の名前は陸でご主人様は死んだと犬に呟くと、「そうですか」と返事があった。急に犬が喋れるようになっていた。人間の数倍の速度で歳を取るせいだと陸は言い、さらにあなたの僕(しもべ)になると言った。仕事を終えた男はいい機会なので傭兵団を抜けることにした。出国時「お名前を、教えてください」と助手席についた陸が言った。


感想
 シズと陸の旅の原点、もとい犬の世話をするお話。生き物の世話は大変だとつくづく思う反面、苦労を経てうまく回り始ればやはり良いものだと感じた。このお話でシズと陸が出会い、「祝福のつもり」へと繋がることになる。そこでシズはある少女を失い、それによりシズに幽霊が取り憑くという冗談話があるのだが、今回のお話も似ていて取り憑く先は陸かもしれない。

 

 今回注目したいのは「名前」という単語である。作中「名前」が使われているのは、序盤の出発時「〜。お前のことは忘れないよ。ところで、名前なんだっけ?」(145p)と傭兵団から言われた台詞と、終盤陸がシズに名前を教えてほしいと催促した二つの台詞である。ここから読み取れるのは、傭兵団からは仲間であるはずなのに名前を知られておらず、彼らとは仲間になりきれていないのに対し、陸からは僕(しもべ)として尽くすべく名前を知りたがっているのである。

 

 ここで振り返りたいのが第三話「取り替える国」である。こちらでも「名前」が使われる台詞が登場しており、一つ目は少女が名乗ろうとして「それは要りません。私達も名乗らないので」と遮った師匠の台詞。もう一つは最後で旅の同行人になった少女に「あなたの、お名前は?」と尋ねた師匠の台詞である。師匠は当初お互い名前を明かさないことにした。これは必要以上の深入りを避けたのだと思う。しかし最後では逆に名前を求めた。これは今後師匠が少女に深く関わっていくことを宣言したように思える。

 


殺害人数:0(シズの累計殺害人数:27)
シズの主張が認められなかった回数:0(累計数:6)
国の技術レベルと特産物等:中世
収穫:陸が仲間になった

 

[ 小説第22巻 ] 22:39 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.28 Thursday
キノの旅二十二巻第四話 議論の国 感想

●議論の国 -Discussion Maker-
一言でいうなら:徹底議論にも裏があった話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:約20ページ
備考:ホヴィー登場

 


あらすじ
 広大な国土の一部で山火事が起きていた。住宅地までは火が及んでいないものの、住人達は消すつもりがないようだった。なぜ消さないのかと疑問に思っていると、TV中継で火事を消すか消すまいかの議論がなされていた。この国では「議論が続く限り絶対に行動を起こさない」という決まりがあり、代表議会で議論が決着しない限り消火はしないのだという。それを話してくれたホテルマンはこの制度を素晴らしいものだと自負していた。だが時間が経ち、風向きが変わったことで火の手が住宅地に及んだ。火は消し止められたものの事前に消火指示を出さなかった代表議会に非難が及んだ。しかし「議論中でした!」という返答にこの国の住人は黙るしかなかった。

 

オチ
 出国したキノの前にトラックが現れた。さきほどの国の商人で再建のための資材を買いにいくという。するとエルメスが、消火反対派に幾ら払ったのかと聞いた。商人はニヤリと笑い答えられないなと言う。時間稼ぎによる火事の被害を期待した建築業界と商人が、反対派に賄賂を渡したようだった。あのルール変えるつもりはないのかと聞くと、議論中さと商人は答えた。

 

感想
 徹底議論をしているはずが裏があったというお話。「議論が尽くされていない」という台詞を聞いたことがあるが、徹底議論したところで裏から手が回っているのなら意味がない。システムを人が作る以上、どこかに穴が発生してしまうということか。奇しくも小説二十二巻発売から約一ヶ月経った2019年8月頃、アマゾンの大規模火災がニュースとなった。この件について管理人は当時あまり関心を寄せず、今回を機に改めて調べてみたもののあまり要領を得なかった。ただ「議論の国」も現実の出来事も、議論の矛先が火事でなく別のところに移ってしまっている気がする。

 

 作中、二日目の朝になぜかエルメスが起きていてキノが疑問に思うという描写がある。これはキノが寝ているうちに火の手が及ばないよう、エルメスが夜通し警戒していたということか。また、このお話でも新たなホヴィーの設定が明かされた。遠路だとホヴィーの燃料が尽きてしまうため、そのかわりに地面を走る車両を使うそうだ。かつて第五巻三話「店の話」では、リフター加熱にともなう故障は素人には対処できないため旅に向いているともあった。

 


キノの容姿と装備:白いシャツ・黒いベスト・カノン
エルメスの言い間違い:なし、カウチポテトは正しく言った模様(累計言い間違い数:50)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:57)
国の技術レベルと特産物等:近未来
収穫:無料の宿と食事

 

[ 小説第22巻 ] 19:34 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.18 Monday
キノの旅二十二巻第三話 取り替える国 感想

●取り替える国 -Changeling-
一言でいうなら:赤ちゃんを取り替えられた話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:師匠と弟子、まだ名前を聞いていない少女
話の長さ:約60ページ
備考:戦闘あり

 

 


あらすじ
 遠路はるばる辿り着いた国は貧富の差が激しく、治安の問題から武器の持ち込みが禁止されていた。師匠達は商売で大儲けしそれぞれの夜を過ごした。翌朝、別れ道をどちらへ進んだものかと考えていると、車の前に一人の女の子が飛び出してきた。十二、三歳ほどの少女は五ヶ月前に両親を亡くし一人暮らしをしていたが、ここしばらく誰かに見られている気がし恐怖心から逃げてきたのだという。事情を聞いた師匠は彼女の家に同行することにした。豪華な家に入ると近くに越してきたという女性が訪問してきて、門を開けた途端ナイフを取り出した。丸腰であった師匠はすぐに相棒を女性に向け突き飛ばし、相棒は負傷しつつも女性を気絶させた。

 

 通報し2名の警察が到着。捕まえた女性から話を聞くと、少女の両親を殺したのは自分だと明かした。しかし自分は悪くない、そこにいる少女は私の娘だと言い放った。金持ちと病院がグルになり、貧民である自分から子供を取り上げたのだと。突拍子もない話に思えたがそれは事実のようだった。裁判でこの事実をぶちまけ金持ちに怒りをぶつけるという。それを聞いた中年の警官は、自分もスラム上がりだからという理由で乗り気になった。

 

 

オチ
 そんな中年の警官をもう片方の若い警官が撃ち殺した。流産したお金持ちのために貧乏人の子供取り替えることは慣例で、病院による取り替え行為でお金持ちは報酬を払い、それにより病院は安定した経営ができるのだと若い警官は言う。そして我が子が裕福な環境と貧しい環境、どちらが幸せかと言う。実は若い警官も「取り替え子」だったのだ。血の繋がっていない金持ちの親に育てられた彼は、育ての親こそ最高の親だと言う。そして少女に銃を差し出し敵討ちをしないかという。少女はそれを亡くなった両親は望んでいない拒否。すると若い警官は捕まえていた女性を殺害、次は少女の番となったとき、少女は財産の全てを報酬に師匠達にこの国から連れ出すよう言った。それを聞いた師匠達はすぐさま反撃し男を気絶させた。


 数日後、師匠達の車が出国した。それを頭に包帯を巻いた私服の男が睨んでいた。買い込んだ荷物の中には少女がいた。師匠は初めて「あなたの、お名前は?」と少女に聞いた。

 


感想
 産んだ子をすり替る「取り替え子」をめぐるお話。裕福な環境で育つのと貧しい環境で育つのはどちらが幸せか、価値を認めてくれるところに行かなければ輝く者も輝けないという意見は正しいように思える。ただ発言主は若い警官であり悪者なのだから否定したいところ。しかし人権侵害などの単語が浮かぶもののどうもピンとくる言葉が浮かばなかった。ここは視点を変えてみたい。当たり前の事だがこのお話は「キノの旅」に収録されているお話である。これまでキノの旅では、さまざまな国の人々が有言実行と引き換えに凄まじい弊害を見せつけてくれた(多数決を順守するあまり一人だけになってしまったり)。この警官もその一例だと捉えれば…つまり「現実を伴わない」主張だと思えば否定することができそうである。

 

 物語の序盤、相棒は羽目を外すと言うと夜の街へ繰り出し朝帰りをする。具体的な記述はないが、これまでこういった類の話はなかったので意外だった。師匠と相棒はそういう関係でないと思われるが、かといってほかの人に手を出すとも思えない。
 師匠は入国時に武器を取り上げられ丸腰だったがやはり強かった。武器を取り上げられた際師匠は「身の回りにあるものを、なんでも武器にすればいいだけです」と言ったが、結果身の回りにあった相棒を突き飛ばし武器にした。相変わらず師匠は鬼だった。
 管理人は小説22巻は今後のシリーズ展開を占う重要な巻だと捉えている。それを踏まえ、師匠達に旅の仲間が加わったことはシリーズ展開の拡大に思える。しかし逆に考えると師匠達の旅を劇変させる要素であり、それゆえに旅の終わりのきっかけとなるのではとも危惧している。

 


師匠達の容姿と装備:リヴォルバー・パースエイダー・ライフル
殺害人数:0(師匠達の累計殺害人数:120)
師匠達が狼藉を働いた回数:0(累計数:12)
国の技術レベルと特産物等:現代
収穫:車に積めるだけの少女の財産

 

[ 小説第22巻 ] 21:44 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.11.01 Friday
キノの旅二十二巻第二話 退いた国 感想

●退いた国 -Leader-
一言でいうなら:鉱山になる前は国があった話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス、師匠(言及のみ)
話の長さ:約20ページ
備考:口語がメインの話

 


あらすじ
 巨大な採掘場がある谷に着いた。師匠から聞いた話ではこの谷に国があるはずだった。どこへ行ったか話していると、いきなり声をかけられた。声の主である眼鏡のお爺さんが事情を話してくれるという。現在採掘されているのは「ルスジェルトニウム鉱石」というもので、ホヴィーの原動力となる貴重な鉱石だ。四十年ほど前、ここより西にある大国がそれを発見した。しかし採掘するには元々あった谷の国が邪魔だった。退いてくれれば見返りをすると頼んだが谷の国は応じない。そこで大国はスパイを派遣、寝返ってそうな一人を見つけ出した。その一人が新たなスパイとなったことを皮切りに谷の国は分裂、多くは大国へ移住し最後まで残った者は自害した。


 そのスパイが語り手のお爺さんだねとエルメスが言い、本人はそれを認めた。お爺さんには昔妻がいたが、大国の技術があれば助かる病気だった。寝返ったことで薬を得て妻は生き永らえたが、本人は大国へ移住を拒否していた。妻に全てを打ち明けたところ自分を滅多刺しに自らも自決した。しかしお爺さんだけは大国に監視されていたため一命を取り留めたという。それからは顔を整形して別人として生き、不自由なく暮らし年を取ったそうだ。

 

オチ
 そこへホヴィーが来て、お爺さんは護衛らしき人に連れ去られていった。キノは護衛の人にお爺さんについて聞くとこう言われた。我が国の大統領だと。

 

感想
 かつて国があったが、スパイにより失われた話。ホヴィーはキノの旅シリーズに幾度か登場するが、エネルギー元が「ルスジェルトニウム鉱石」だと明かされたのは初めてのことである。加熱後にロッテルラセルバーム式精製をすると純粋ルスジェルトニウムの結晶体になってリフターの中心核になり、これによってホヴィーを浮かすことができるそうだ。


 語り手が当事者というのはキノの旅でよくあるパターンである。しかし最後の台詞によりこれまでの話が疑わしくなった。少なくとも管理人にはそう思えた。一方で自身のニコ生放送では「やった」という趣旨のコメントが寄せられ、その方はスパイのお爺さんは国と妻を失うも、大統領となったことで大国を制したのだと感じたそうだ。果たして語られた内容は全て真実なのか? 本編冒頭にて"人を簡単に信じるな"という師匠の教えが記述されているのも伏線のように思える。今は結論はだせないが、考えがまとまったら追記したい。

 

 

キノの容姿と装備:不明
エルメスの言い間違い:ババ抜き根性→正:立ち退き交渉(累計言い間違い数:50)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:57)
国の技術レベルと特産物等:国外・ルスジェルトニウム鉱石
収穫:なし

 

[ 小説第22巻 ] 22:49 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.10.05 Saturday
キノの旅二十二巻第一話 仮面の国 感想

●仮面の国 -persona-
一言でいうなら:仮面をつけ続けたため顔が退化していた話
名言:「やらなくてすむようになったらやりたくなるとは、なんとも皮肉なもんだね、キノ」

 

登場人物:キノとエルメス、師匠と相棒、シズと陸(ティー加入前)
話の長さ:約20ページ
備考:漫画登場話・三者三様

 

 

あらすじ
 師匠達が辿り着いた国の人々は、他人と顔を合わせることを極端に嫌っていた。国の偉い人によると、顔の美醜を気にするあまりお互い顔を見ることが怖くなってしまったそうだ。それでも社会は回っているが、いいことではないのでなにか改善案はないかと聞いてきた。ないと思った相棒だが、師匠はあると答えた。

 

 それでお師匠さんの解決策って?とエルメス。仮面を渡したんだよとキノ。国の人はとまどったが、せっかくなのでみなで使ってみることにしたそうだ。そして今から行く国がその国だ。国に着くと住人のみなが笑顔の表情の仮面で出迎えた。師匠が持ち込んだ仮面を住人が進化させ、操作により表情の変化がつけられるようになっていた。住人達は仮面の生活にとても満足していた。

 

 シズと陸もこの国に来た。キノ達と同様住人は仮面をつけて生活していた。実はみな素顔でいたいがきっかけがほしいではとシズ。そこでみなで仮面を外してみないかと大衆の前でシズは訴えた。意外と住人は関心を持ってくれ、みなで同じタイミングに仮面を外すことにした。


オチ
 シズと陸は絶句した。仮面を外したことで現れたのは、仮面のような素顔だった。怖くて逃げたしたくなるほどの顔が無数にこちらを見ていた。昔より表情を動かさなかったことで、表情を作る能力が失われてしまったのだ。仮面を外してみたものの居心地が悪いようで住人達は再び仮面をつけた。陸がシズに声をかけると、シズは仮面をつけて泣きそうな表情を作った。仮面の操作が苦手なシズなので、表情の操作が正しいのか間違っているのか陸には分からなかった。

 


感想
 かつて管理人が学生の頃教科書で読んだ「素顔同盟」のように、やっぱり素顔が良いよね、となるかと思いきや衝撃の展開を迎えたお話。このお話は現在キノの旅で別メディア展開されている漫画シオミヤイルカ版の第5巻にて、小説よりも先に公開されたお話である。まず原作者がお話を書き下ろし、それをシオミヤイルカ版として漫画刊行、そして今回の小説刊行に至ったのである。管理人は漫画版を先に読み、そして今回の小説となった。その結果、同じストーリーでも印象が大きく異なるものとなった。

 

 まずオチの顔のイラストである。漫画版はもちろん小説版でも挿絵が添えられ、仮面が外された際の光景が描かれる。どちらも衝撃的な光景であるが、やはり管理人は漫画版での衝撃の方が大きい。漫画版を見た際の無数の不気味な表情に、思わず「ヒエッ」と声を出すほどだった。一方小説版の「顔」という漢字の大量の羅列だが、不気味というよりは「?、なにこれ」というのが第一印象だった。

 

 小説における事の異常さを説明する文章も、管理人にはイメージしづらい物だった。別に文章表現がうまいへたというわけではなく、漫画の絵と比べるとどうしても分かりやすさに差があった。漫画ではその時の光景が絵によって提示され、作者と読者のイメージが共有される。一方で小説は文章であり、そこから読者が個々の引き出しを使いその時の光景をイメージする。つまり同じ文章であっても抱くイメージは個々で異なるのである。そして管理人は、キノの旅に限らず小説を読んでいてうまくイメージできないことが多い。これでは表現媒体として小説より漫画の方優れているかと思いきや、そうともいえない。

 

 「仮面の国」小説版には漫画版で知り得なかったさまざまな事実があった。例えば、物語のラストでシズは泣きそうな仮面の表情となる。漫画版を読んだ際はまさかの展開にシズは悲しくなったのだろうと管理人は疑いの余地もなく思った。しかし小説版では泣きそうな仮面の表情について、仮面の操作が下手なシズなので正しく操作できていたのか分からないとあった。つまり漫画版では気にも止めなかったことに、小説版では考える余地を与えている。

 

 そもそも、シズが仮面の操作が下手という点も漫画では気付くことができない。漫画を読んだのはしばらく前で確認はできないのだが、例え漫画でシズが露骨に仮面の操作に手間取っていても、不自然でない限りはさして気にも留めないはずである。その点、小説にて仮面の操作が下手と文章があることで、シズは不器用という可愛げのある情報を得られた。師匠達に関するタダ飯食べない理由はないという記述も同様である。漫画では何気なく食事をしているが、タダ飯の記述があることでがめつい師匠達にクスリと笑うことができるのである。もしこれを漫画で表現しようとした場合、絵の動きだけで見せるのは難しく、吹き出しでキャラにしゃべらせればくどく感じる気がする。

 

 漫画版が先に公開された今回の「仮面の国」、それにより漫画媒体と小説媒体の特色を見出すことができた。漫画はイメージがはっきりしており、それゆえに今回のようなお話では衝撃が大きい。しかし、小説では考察余地の提示やキャラクターの情報をテンポを削ぐことなく自由に付け加えられるのだ。

 

 

キノの容姿と装備:防寒着
殺害人数:0
国の技術レベルと特産物等:近代(仮面技術と石造りの建物)・仮面
収穫:仮面と交換して得た報酬(師匠)

 

 

 

[ 小説第22巻 ] 10:31 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.09.29 Sunday
キノの旅二十二巻口絵 誕生日 感想

●誕生日
一言でいうなら:誕生日埋めに協力してあげた話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:キノとエルメス
話の長さ:数ページ
備考:人口数万

 

 

あらすじ
 国に入ると挨拶もそこそこに誕生日を聞かれた。キノとエルメスは分からないと答えた。残念がる住人に事情を聞いてみる。この国では誰かの誕生日を盛大に祝う文化があり、以前は親しい仲の人だけの行事だったが、今では同じ国の人であればみなで祝うという。そのため毎日のように誰かの誕生日を祝えて幸せなのだが、七月十日と十一月十一日だけ誰の誕生日でもないらしい。キノ達の誕生日がその日ならと住人は残念がる。するとエルメスが、キノにちょっとタンクを叩いてみてと言った。キノが従うとエルメスは誕生日を思い出したと言った。

 

オチ

 今日はキノの誕生日だよとエルメス。キノはあの国で誕生日をでっちあげた事を思い出し、エルメスの誕生日の時もあの国で祝ってもらえるだろうねと言う。いつだったっけとエルメスは答えた。


感想
 この日だけ誰の誕生日でもなく祝えない。そこでその誕生日埋めに協力してあげたお話。最初に読んだ際、2ページ目下段のアスタリスク3つに気付かなかった。これがあることでアスタリスク以降が後日談だということが分かる。どちらがどちらの日付にしたかは伏せたようだ。

 埋まってない誕生日である七月十日と十一月十一日、この日付になったのには理由があるのか。七月十日は本書初版発行日=発売日と同じである。一方で巻末の書籍情報によるとこのお話の初出は電撃マガジン2018年7月号であり、加えて文庫収録にあたり加筆修正しているともある。こちらは2018年6月9日発売なので、発売日に合わしているとすればこちらでは日付が6月9日になっているはずである。申し訳ないが個人的に調べる機会がないため、ここまでの推測止まりとなる。

 このお話は「キノの旅」らしさが詰まっているように感じる。そのらしさとは、言葉にするならば「行事の誇張とその影響」である。誕生日という「行事」を現実のものと変え「誇張」し、それゆえに起こった「影響」を挙げる。これまでキノの旅ではさまざまな行事や習わしが誇張され、それゆえに起きた出来事がお話になってきた。キノはそれを聞き入れ、時には今回のように協力してあげるのだ。
 

 

キノの容姿と装備:不明
エルメスの言い間違い:なし(累計言い間違い数:49)
殺害人数:0(キノの累計殺害人数:244)
キノが危害を加えられそうになった回数:0(累計数:57)
国の技術レベルと特産物等:不明・誕生日をみなで祝う
収穫:誕生日を祝ってもらえた

 

[ 小説第22巻 ] 23:35 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.09.16 Monday
キノの旅二十二巻口絵 知らない話 感想

●知らない話
一言でいうなら:シズだけがオーロラを知らない話
名言:(強いてあげるものはなし)

 

登場人物:シズと陸とティー
話の長さ:数ページ
備考:国外

 

 

あらすじ
 夜の雪原にて、空が光っていた。陸にはそれがオーロラだと分かったが、シズはオーロラのことを知らず世界の終わりなのではとあたふたしていた。陸がシズにオーロラのことを教えようとすると、その口をティーが塞いだ。ティーはオーロラを知っているようだが、シズに対しこんな時だけ饒舌に知らないと言った。

 

感想
 あたふたするシズをティーがからかうお話。こんな時だけ饒舌にしゃべるティー、もう調子がいいんだから。思えばこの行動も、ティーがシズに信頼を寄せてるからこそ生まれる行動である。

 


殺害人数:0(シズの累計殺害人数:27)
シズの主張が認められなかった回数:0(累計数:6)
国の技術レベルと特産物等:国外
収穫:オーロラが見れた

 

 

 

[ 小説第22巻 ] 22:58 - | comments(0) | trackbacks(0) |2019.09.11 Wednesday